2010-01-01から1年間の記事一覧

年の徂徠

年の徂徠 いま燈火(あかし)は、弱弱しげに、細まる。 乞丐(かたゐ)のやうな十二月が 見窄らしく扉(と)に衝(あた)つて、わが家の角を折れていつた。‥‥‥‥二足(あし)、三足(あし)。 そつと、闇のなかにと降(お)りてゆく、年の背(そびら)。 その…

雪の詩人・高祖保

「夜のからんからんに乾いた空気の、その底で」、高祖保の詩集『雪』を読む。 師走の夜ふけ、独坐する北向きの書斎は、寒い。 『雪』は、そんな場所で読むにふさわしい詩集である。 雪もよひ 寒い。 わかい歯科医のもとへ 一句 「歯石(しせき)はづす 夜の…

不在の言葉

古本まつりで賑わう神保町の裏路地で、ひっそりと「福田尚代展」が始まった。 喫茶「さぼうる」隣の「gallery福果」にて、1日から13日まで。詳細は、こちら 福田氏はこれまで、「言葉」に対する独自の感覚を、書物・手紙・名刺などを用いたオブジェや回文で…

瀧井孝作と櫻井書店

瀧井孝作 『琴の物語』(少年のための純文学選) 櫻井書店、昭和22年初版、昭和25年重版 先月はじめに、田村書店の店頭で見つけた。初版600円、重版400円だった。初版の装幀と扉絵は里見勝蔵、挿絵は鈴木信太郎。 重版の装幀は寺田政明にかわっている。扉絵…

Kindle 3のVoice Guide

Kindle 3には、先代KindleやKindle DXにもあった合成音声による本文読み上げ機能・Text-to-Speechに加えて、操作メニューを読み上げる機能・Voice Guideが搭載されている。(現在いずれも音声は英語のみ) Voice Guideの起動は、ホーム画面>Menu>Settings…

豊かさの影で

今週はのっけからこんなイベントに行ってきた。 9/5 討論会「障害のある子どものためのデジタル教科書の在り方を考える」(@東大先端研) 9/6 水俣展(@明大アカデミーコモン) 9/7 ロジェ・シャルチエ講演会「本と読書、その歴史と未来」(@国立国会図書…

富山途中下車

朝市を歩いたあと早々に高山を発ち、北陸回りで江州彦根の実家へ向かう。 富山で途中下車。富山県立近代美術館へ行く。 瀧口修造コレクションを中心に常設展をみる。ミュージアムショップにて、瀧口修造のデカルコマニー連作「私の心臓は時を刻む」の図録を…

飛騨高山

江戸から飛騨高山経由で江州彦根に帰省する。 名古屋で高山本線に乗り換えて列島を縦断、富山から北陸本線で米原へ、という大きな逆S字を描くルートをとる。 一日目は飛騨高山に滞在。 古い町並は後回しにして、まず高山市図書館を見に行く。 レトロな図書館…

ファルネーゼ・コレクションとナポリ・バロック

「カポディモンテ美術館展」(@国立西洋美術館)に行く。 カポディモンテ美術館は、ナポリの国立美術館。元は、ナポリ王カルロ7世(のちスペイン王カルロス3世)が1738年に建造を始めたブルボン家の宮殿。現在は現代美術までカバーする美術館だが、コレク…

電子書籍元年の東京国際ブックフェア

「東京国際ブックフェア」(@東京ビッグサイト、11日まで)に行く。 電子書籍元年とあって、同時開催の「デジタルパブリッシングフェア2010」(10日まで)の人口密度高し。 ここの花形は出版社ではなく、電子書籍の制作と配信を担う企業。それぞれのソリュ…

線の探検

瀧口修造の光跡 II 「デッサンする手」(@森岡書店)に行く。 瀧口修造研究家・土渕信彦氏所蔵のドローイング・水彩・デカルコマニーなど、約30点を展示。今日から7月10日まで。 白く静謐な空間で、ゆっくり「文字でもなく、絵でもない線の探検に耽る」(「…

iPadでマルチメディアDAISY図書が読めること

iPhoneアプリ・VOD(Voice of DAISY)。iPad購入日に導入したものの一つである。 これは、DAISY 2.02規格のマルチメディアDAISY図書(音声+フルテキスト)と音声DAISY図書(音声+NCC)をiPhone/iPod touchで再生するためのアプリ。DAISY(Digital Accessib…

Kindle 2.5.3と青空文庫

先日、日本語フォントハックを外してKindleのファームウェアを手動で2.5.2にアップデートしたのだが、しばらくするといつの間にか2.5.3になっていたのだった。2.5.2から、フォルダに整理出来るようになったり(画面上4つがフォルダ、括弧内がファイル数) …

酔っぱらいのKindleケース

北海道土産をもらった。日本最北の酒蔵・国稀酒造の甚平袋。 こうやって使うのだろうが、 残念ながら、酒瓶さげて出かける機会はあまりない。 他の用途を探したところ、 Kindleケースにぴったりだった。 酒と文字に酔い痴れたいKindleユーザーにおすすめ。 …

電子書籍端末と視覚障害者

第28回出版UD研究会「電子書籍端末をさわって見くらべよう」(@専修大学)に行く。電子書籍端末のアクセシビリティがテーマ。イースト株式会社・藤原隆弘氏による電子書籍端末の動向に関する講演のあと、参加者全員で実機をさわる。 iPad、Kindle 2、Kindle…

この先にあるブック・ビジネスのかたち

第1回ARGトーク「この先にあるブック・ビジネスのかたち–持続可能な「知のエコシステム」の構築のために」(@丸善丸の内本店 3F 日経セミナールーム)に行く。上の階は松丸本舗。がんばってiPadでメモを取ってみた。(隣の人も!) が、今さらそんなもの読…

iPadのVoiceOverで本を「聴く」

iPadには、Mac OS X機やiPhone 3GS、iPod TouchなどのApple製品と同様、画面読み上げ機能「VoiceOver」が標準搭載されている。 言語は「音声環境」にある9言語に対応。読み上げ速度は調整できるが、声質(男性・女性など)は選べない。英語・日本語・フランス…

iPadで近代デジタルライブラリーの資料を読む

国立国会図書館が所蔵する明治・大正期の資料を画像で閲覧できる近代デジタルライブラリー。 iPadでもWebブラウザSafariで表示はできるが、ちと読みづらい。できれば通信環境を気にすることなく、さっと取り出して本のようにさくさく読みたい。Mac OS Xの標…

読書端末としてのiPad

職場などでいろんな人にiPadを見せると、「大きい」とか「半分の大きさなら買う」とかいった声が聞かれる。まあ、iPhoneやiPodに馴染んだ人にはそう感じられても仕方なかろう。個人的には、数日使ってみて読書端末としてならちょうどいい大きさに感じた。こ…

初日から出突っ張り、モテモテiPad

渋谷のソフトバンクに朝7時頃から並び、10時半入手。iPad 3Gモデル。 とりあえず以下のアプリを入れてみる。 ケースにはとりあえずクッション封筒を代用。 職場に持っていくと、フロアのご婦人たちがわらわら集まってきて、プチお披露目会と相成る。こんなに…

長谷川潾二郎のまなざし、洲之内徹のまなざし

「長谷川潾二郎展」(@平塚市美術館)に行く。 片方しかない髭のエピソードで有名な「猫」、洲之内徹が神田の古道具屋から2000円で買ったという「バラ」、その洲之内が最高作と評した「時計のある門(東京麻布天文台)」などの代表作を含む124点を展示。ほ…

明治の記憶術書を読む その2

望月誠 『記憶拡充論』 思誠堂、明治12年7月 本文63頁、定価25銭也。本書は明治期初の記憶術書と思われる。(明治記憶術ライブラリー参照) 国立国会図書館の近代デジタルライブラリーからPDFで落として読む。 著者について 望月誠については、石塚純一「「…

李朝の「木偶」展

「李朝の「木偶」展 豊饒な葬いの群像」(@茶房 李白、6月20日まで)に行く。 「木偶」(モグ)とは、朝鮮で葬儀に使われていた喪輿(サンヨ)を装飾する木彫りの彩色人形。19世紀後半から20世紀半ばまでのもの約100点が、韓屋を模した茶房の李朝家具に、直…

ドゥーチェの見た夢

パオロ・ニコローゾ『建築家ムッソリーニ 独裁者が夢見たファシズムの都市』 桑木野幸司 訳、白水社、2010年 GW、上海万博のでっかいパビリオンを巡るのもよかろうが、ドゥーチェの見たでっかい夢を紙上に追うのもまた乙なもの。 統領がいかにして、建築を通…

佐伯祐三の下落合

「佐伯祐三展―下落合の風景」(@新宿歴史博物館)に行く。 パリからの一時帰国時代(1926-27年)に描かれた連作「下落合風景」13点に焦点をあてた、新宿ならではの企画。目白文化村などのハイカラな洋館ひしめく街並ではなく、電柱が立ち並ぶ通りや日本家屋…

ロシア構成主義のまなざしを言葉で

ミュージアム・アクセス・グループMARの鑑賞ツアーに参加する。視覚障害者と見える人が言葉で一緒に美術鑑賞しようという試み。参加者19人、うち視覚障害者7人。視覚障害者ひとりにつき見える人だいたい2人という組み合わせでグループ分けがなされる。 今…

杏仁シェイクとシェイクスピア

最近はまっているダイドーの「ひんやり杏仁シェイク」。 「盛りつけ例」とあるが、決して鉢に盛りつけて食すものではない。 だが中身は杏仁豆腐そのもの。このように5回以上振ってくずして飲む。振る回数によってのどごしを変えられるのがよい。 さて今日は…

点と線

一昨日キノコノクニヤ書店で買った本。子供が喜ぶ遊び百科。 なんでこんなの買ってしまったかというと、 孫に暗号で手紙を書いてみよう、という頁が目に留まったから。 この暗号、サイモン・シンによれば、 一七〇〇年代にはフリーメースンのメンバーたちが…

シームレスな知のプラットフォームを

日本の古本屋シンポジウム「滅亡か、復権か―大規模デジタル化時代と本の可能性」をustreamで聞いて思ったこと。頭に残った言葉をつないだらこうなった。デジタル化時代にも、デジタル化の網からこぼれ落ちるアナログな知は相当数存在するだろう。そんな時代…

至言

キノコノクニヤ書店でもらったオリジナル栞。 言語センスに秀でた書店なり。 わが家から最寄りの古本屋である。 系列店名も秀逸。 ちなみに諏訪通りのばーばー書店は最近閉店した。 実はグラフィックセンスにも秀でている。 あまり長いこと見つめてはいけな…