シームレスな知のプラットフォームを

日本の古本屋シンポジウム「滅亡か、復権か―大規模デジタル化時代と本の可能性」ustreamで聞いて思ったこと。頭に残った言葉をつないだらこうなった。

デジタル化時代にも、デジタル化の網からこぼれ落ちるアナログな知は相当数存在するだろう。そんな時代だからこそ価値を増すアナログな知もあるだろう。

先日来、当ブログでは明治の記憶術ブームを戯れに取り上げている。きっかけは昨年の冬、早稲田の古本屋で『記憶術のススメ―近代日本と立身出世』(岩井洋、青弓社、1997年)という本に出会ったことだった。おもしろかったので、自分でも明治に出版された記憶術書を読んでみようと思い、現在どれだけ残っているのかちょっと調べてみた。すると、近代デジタルライブラリー(以下、近デジ)でかなりの数読めることが分かった。だが、「日本の古本屋」でしかヒットしないものもあった。古本屋から近デジに入っているのとは異なる版を買って、思いがけない発見をしたこともあった。これも、些細なことだがデジタル化の網からこぼれ落ちたアナログな知の一例だろう。

滅亡か・復権かというのではなく、デジタル・アナログそれぞれの知が活きるような仕組みこそが必要なのではなかろうか。

例えば、国立情報学研究所の高野明彦教授が紹介した「想―IMAGINE Book Search」。ひとつのインタフェースで、「日本の古本屋」・近デジ・ジュンク堂Webcat Plus文化遺産オンラインなどなど、複数の多様なデータベースがMLA(Museum・Library・Archives)の垣根を越えて横断検索できる。人は必要に応じて、買うか、図書館で読むか、オンラインで閲覧するかを選ぶことが出来る。これからはこういった知との出会いの場が必要性・重要性を増してくるのではなかろうか。