2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

冷泉家の秘籍

東京都美術館の「冷泉家 王朝の和歌守(うたもり)展」に行く。藤原俊成・定家を祖に持つ冷泉家によって、800年にわたり守り伝えられてきた和歌の典籍類が一挙公開されている。今日は本来休館日だが、企画展ごとに設けられる「障害がある方々の特別鑑賞会」…

美術は言葉に翻訳できるか その2

埼玉県立近代美術館の「視覚障害者と楽しむ美術作品鑑賞会」に参加する。同県主催では初の試みだそうだが、後援がミュージアム・アクセス・グループMARなので、事実上はいつものMARの鑑賞ツアーである。東京都美術館の人が偵察に来ている。視覚障害者一人に…

リーヴル・オブジェ

浦和に来たついでに、うらわ美術館の「オブジェの方へ―変貌する「本」の世界」を見る。未来派から現代作家までの、「本」をテーマとした作品の展示会。1時間半くらいいたが、客はほぼ自分ひとりという盛況ぶり。以下、個人的に面白いと思ったもの。 イー・ジ…

Enchiridion 20 トマス・ア・ケンピス

トマス・ア・ケンピス 1380-1471 審判の日が来るとき、私たちが糾問されるのは、何を読んだか、ではなくて、何をしたか、であろう。またどれほど巧みに話したか、ではなく、私たちがどれほど教えに遵って生きたかであろう。 『キリストにならいて』 第1巻第3…

Enchiridion 19 チョーサー

ジェフリー・チョーサー 1328-1400 ※ また一人のオックスフォードの学僧がおりました。 もう長い間、論理学に身を入れておりました。 乗っている馬は熊手のように瘠せていました。 彼自身だってけっして太ってはいなくって、それどころか、むしろ瘠せこけて…

Enchiridion 18 ドメニコ・マンチーニ

ドメニコ・マンチーニ 1434以前-1494x1514 空なるは 農夫の種まき 刈り入れ時を 逸すれば。 空なるは 大将の陣立て 刃交えず 勝利もせねば。 誉むべきは 徳ある行い 知言も時を得 益多く。 なれど今 直き知言 吐けれども 無為の輩が 誉授かる。 学識深き 賢…

Enchiridion 17 ペトラルカ

フランチェスコ・ペトラルカ 1304-1374 書物は、われわれを心底から楽しませてくれ、対話し、助言し、あるいはいきいきとした深い親密さをもってわれわれと結ばれあうのです。しかも書物は、それぞれが読者の心にはいりこむばかりか、ほかの書物の名前をも忍…

読む人のアウラ

昼過ぎから「林哲夫 読む人スケッチ展」を見に、深川資料館通り商店街のカフェ&ギャラリー「深川いっぷく」へ行く。おでこを怪我したピーマン星人氏が目印。 日常風景から、おっちゃん・にいちゃん・ねえちゃんたち(おばちゃんいたかな?)が、何かを読ん…

Enchiridion 16 リチャード・ド・ベリー

リチャード・ド・ベリー 1287-1345 書物の中で、われわれは遠い過去の故人の生きた姿に出会い、また将来を予見する。書物の中で、戦争にかかわる諸事は整理され、また平和の法も書物から生まれる。もし神が書物という救いのすべを被造物に与えなかったなら、…

Enchiridion 15 ペルシアの格言 その2

ペルシアの格言 彼らはその誉れ最も高き賢者に向かって尋ねた。如何にしてそのような知の高みにまで至ったのか、と。賢者こたえて曰く、「己の未だ知らぬことを、何でも躊躇わずに問うていったのである。汝らも知らぬことがあれば何でも問うがよい。その僅か…

Enchiridion 14 インドの格言

インドの格言 行い正しい人の口から出る言葉は、 滑りやすい場所での杖のようなものである。 〔『ティルックラル―古代タミルの箴言集』 第2篇第42章415、高橋孝信訳、平凡社(東洋文庫660)、1999年、76頁〕※ Alexander Ireland (ed.), The Book-Lover's Enc…

Enchiridion 13 ペルシアの格言

ペルシアの格言 賢者は愚者を見分けることができる。彼もまたかつて愚者であったから。だが愚者は賢者を見分けることができない。いまだかつて賢者であったためしがないのだから。※ Alexander Ireland (ed.), The Book-Lover's Enchiridion, 5th ed., London…

Enchiridion 12 パウロ

パウロ A.D.65 かつて書かれたものはみな、われらを教え導くためのもの (ロマ15:4)みなともに学び、みなともに励まされるように (1コリ14:31) Alexander Ireland (ed.), The Book-Lover's Enchiridion, 5th ed., London, Simpkin, Marshall & Co., 1888,…

Enchiridion 11 小プリニウス

小プリニウス A.D.61-105以後※ 叔父プリニウスは常々こう言っていた。「どこも役に立たないほど駄目な本などない」と。 『書簡集』 第3巻4 よく言われるように、多読ではなく精読をすべきでなのである。 同上 第7巻9 Alexander Ireland (ed.), The Book-Love…

Enchiridion 10 クインティリアヌス

クインティリアヌス A.D.42-115※ 〔判断力を鍛えるにあたり、弁論を耳から聴くという方法に比べて〕読書という方法では、偏った判断に陥らずにすみ、激しい弁舌で煙に巻かれることもなく、確かめたいとき、記憶に留めたいときに同じ箇所を何度でも読み返すこ…

Enchiridion 9 アウルス・ゲッリウス

アウルス・ゲッリウス A.D.117頃-180※ 若者の人品は、至言によって矯められるよりもむしろ、誤用悪用された言葉によって損われることの方が多い。『アッティカの夜』12.2 Alexander Ireland (ed.), The Book-Lover's Enchiridion, 5th ed., London, Simpkin,…

Enchiridion 8 プルタルコス

プルタルコス A.D.46-120 書物は甘菓子の如く、その旨味ばかりを愛でるべからず、滋養効果をこそ珍重すべし。どちらも捨てがたき魅力なれど、後者をもって長所とすべし。※ Alexander Ireland (ed.), The Book-Lover's Enchiridion, 5th ed., London, Simpkin…