Book-Lover's Enchiridion

Enchiridion 31-2 フランシス・ベーコン その2

人びとの知力と知識の似姿は、書物のなかにいつまでもあり、時の損傷を免れ、たえず更新されることができるのである。これを似姿と呼ぶのも適当ではない。というのは、それはつねに子をうみ、他人の精神のなかに種子をまき、のちのちの時代に、はてしなく行…

Enchiridion 31-1 フランシス・ベーコン その1

ベーコン卿 1561-1626 学問は〔思考の〕楽しみと〔弁論の〕飾りと〔仕事を処理する〕能力のために役立つ。楽しみのためになる学問の主な効用は、私生活と隠退時にある。飾りのためになる主な効用は、会話にある。そうして能力のためになる主な効用は、仕事に…

Enchiridion 30 フィリップ・シドニー

サー・フィリップ・シドニー 1554-1586 行為の支配権はすべて知によって得られるべきであり、知は多くの知識を集めること、すなわち読書によって最もよく得られるべきものであることは、論を俟たない。『詩の弁護』1595年 Alexander Ireland (ed.), The Book…

Enchiridion 29 ジョン・リリー

ジョン・リリー 1554-1606 銭金あふれる財布より、書物あふれる書斎の方が、はるかにふさわしい。『ユーフュイーズ:機知の解剖』1578年 Alexander Ireland (ed.), The Book-Lover's Enchiridion, 5th ed., London, Simpkin, Marshall & Co., 1888, p.28.

Enchiridion 28 英国国教会祈祷書

英国国教会祈祷書 1549年版 読み、銘じ、学び、且つ深く味わい…降臨節第二主日特祷 Alexander Ireland (ed.), The Book-Lover's Enchiridion, 5th ed., London, Simpkin, Marshall & Co., 1888, p.28.

Enchiridion 27 ジョン・フローリオ

ジョン・フローリオ 1553-1625 書物の名誉について 名聞ひとたび立ちしのち 然るべきこと、そは記憶 次いで載籍、後人のため 名士の名前、その徳行 他の誉れなど藻屑のごとく 本分欠けば直ぐと消え いかな偉功も忘却の果て 在りし日のこと誰か覚えん 記憶乏…

盲目のモンテーニュ研究家ピエール・ヴィレー

モンテーニュの愛読者ならば、ピエール・ヴィレー(Pierre Villey, 1879-1933)の名を一度は目にしたことがあるのではなかろうか。手堅い実証主義的手法でモンテーニュの読書歴と各エセーの執筆年代を調べ上げ、その思想の3段階進化説(ストア主義ー懐疑主…

Enchiridion 26-8 モンテーニュ その8

書物は、選ぶことを知っている人にとっては多くの快適な性質をもっている。けれども、どんな楽しみも苦しみをともなわないものはない。この読書の楽しみも他の楽しみと同じように、純粋ではない。それなりの不便をもち、しかもきわめて重大な不便をもってい…

Enchiridion 26-7 モンテーニュ その7

もしも私に向かって、ミューズの女神をただ慰みのため、暇つぶしのために用いることはこの女神の品位を落とすことだと言う人があるならば、その人は、私と違って、快楽や遊戯や娯楽がどんなに価値のあるものかを知らない人である。私はむしろ、それ以外の目…

Enchiridion 26-6 モンテーニュ その6

ここ※が私の居場所である。私はここにおける私の支配を絶対的なものにしようとつとめる。そしてこの一隅だけは夫婦、親子、市民の共有から引き離そうとつとめる。ここ以外では、私はどこでも口先だけの権威しかもっておらず、その実質も疑わしいものにすぎな…

Enchiridion 26-5 モンテーニュ その5

書斎は円形をなし、私の卓と椅子のあるところだけが直線になっている。私のいるところからぐるっと円くなっているから私を囲んで五段に並んだ本が一目で見渡せる。書斎からは三方に豊かな視野が果てしなく開け、室内には直径十六歩の空間がある。冬はここに…

Enchiridion 26-4 モンテーニュ その4

書斎は塔の三階にある。一階は私の礼拝堂であり、二階は寝室とその続きの間で、私はここでときどき一人になるために横になる。その上に衣裳部屋がある。これは昔、わが家のもっとも役に立たない部屋であった。私はそこで一生の大部分の日を、また、一日の大…

Enchiridion 26-3 モンテーニュ その3

私は家にいると、割合頻繁に書斎に通う。そしてそこからやすやすと家事を監督する。入口の上にいるから、すぐ下の庭園と家畜小屋と中庭と、わが家のたいていの建物が見おろせる。私はそこでときにはある書物を、ときには別の書物を順序も目的もなくぱらぱら…

Enchiridion 26-2 モンテーニュ その2

袂に薬をもっている病人は同情に値しない。このきわめて真実な格言を実際に経験し実践するところに私が読書から得ている成果のすべてがある。私は実際には、書物をあまり利用しない。その点では書物を知らない人々とほとんど同じである。私は書物を、守銭奴…

Enchiridion 26-1 モンテーニュ その1

ミシェル・ド・モンテーニュ 1533-1592 書物との交際は、それ※よりもはるかに確実で、はるかにわれわれ自身のものである。これはほかのいろんな長所では初めの二つに劣るけれども、その奉仕が常に不変で手軽だという長所をもっている。そして、私がどこへ行…

Enchiridion 25-6 ロジャー・アスカム その6

※以下は、英語もギリシア語やラテン語と同じくイアンボス調に対応できる、という主張のあとに続く文章。 だが、みな無知と怠惰のために、少しも極めようとしたがらないし、そうしようと努めもしない。アテナイとローマの偉大なる詩人たちは、粗野な大衆のご…

Enchiridion 25-5 ロジャー・アスカム その5

※その3・4は抜粋集に関する節からだったが、以下は模倣に関する節からの抜粋。 それ〔模倣〕によって何を習い学ぶにせよ、われらが修辞学教室では、書くにも話すにも、選り抜きの少数者、これと決めた一者に拠るべきである。肖像や絵画の技法を学ぶとしよう…

Enchiridion 25-4 ロジャー・アスカム その4

だが、抜粋集が手紙や何かといった日常的な書きものに巧く活用されているかというと、さにあらず、それはまた大著をものす場合も同じで、必ずしも使われていない。もっとこれを日ごろからよく読み、抜かりなく参照して引くべきだ。というのは今や、一人が筆…

Enchiridion 25-3 ロジャー・アスカム その3

確かに常套句集は、人を整理された一般的知識へと導き、読んで学んだ事柄を整然と引用させ、確かな主題に向かわせ学習を散漫にさせないために、欠くべからざるものである。※ だが、いつも抜粋集や常套句集と首っ引きで、規則正しい学習を日々課されず、聖書…

Enchiridion 25-2 ロジャー・アスカム その2

このようにつらつら述べ立てて、私は何も、若き紳士は常に一冊の書物に沈潜しておらねばならんとか、優れた先学の言を持ち出しては、正当な娯楽でも見向きもするなとか、どんなに適切でも気晴らしはいかんとか言いたいのではない。それは本意でない。なんと…

Enchiridion 25-1 ロジャー・アスカム その1

ロジャー・アスカム 1515-1568 ※1 ドイツへ発つ前に、私はご愛顧賜ったかのやんごとなきレディ、ジェーン・グレイ※2に暇乞い申し上げるべく、レスターシアのブロードゲイトに立ち寄った。公爵であらせられた彼女のご両親は、家中の者に紳士淑女を引き連れ、…

Enchiridion 24 ルター

マルティン・ルター 1483-1546 優れた書物はその一冊一冊がひとつの業であり、優れた業はそのひとつひとつが一冊の書物にも等しい。 いかなる学問の徒であれ、書物はすべからく確かなものを厳選し、何度も何度も読むべきだ。多読しても学問は修まらず、むし…

Enchiridion 23 マキァヴェッリ

ニッコロ・マキァヴェッリ 1469-1527 晩になると、家に帰って書斎に入ります。入口のところで泥や汚れにまみれた普段着を脱ぎ、りっぱな礼服をまといます。身なりを整えたら、古の人々が集う古の宮廷に入ります。私は彼らに暖かく迎えられて、かの糧を食しま…

Enchiridion 22 エラスムス

デシデリウス・エラスムス 1467-1536 なにより肝心なのは、得る知識の量ではなく、その質なのです。でもここで君に、勉強がより確かなものになるばかりか、より易しくなる方法を教えましょう。職人たるもの、自分の仕事には確たる規則を持って臨むものです。…

Enchiridion 21 リンゲルベルギウス

ヨアキムス・フォルティウス・リンゲルベルギウス 1536没 学問を始めたばかりのころは、たいして進歩が実感できなくとも意気消沈してはならぬ。なんとなれば、その瞬間の動きが捉えられなくとも時計の針の確実なる進み具合は分かるように、あるいは、その時…

Enchiridion 20 トマス・ア・ケンピス

トマス・ア・ケンピス 1380-1471 審判の日が来るとき、私たちが糾問されるのは、何を読んだか、ではなくて、何をしたか、であろう。またどれほど巧みに話したか、ではなく、私たちがどれほど教えに遵って生きたかであろう。 『キリストにならいて』 第1巻第3…

Enchiridion 19 チョーサー

ジェフリー・チョーサー 1328-1400 ※ また一人のオックスフォードの学僧がおりました。 もう長い間、論理学に身を入れておりました。 乗っている馬は熊手のように瘠せていました。 彼自身だってけっして太ってはいなくって、それどころか、むしろ瘠せこけて…

Enchiridion 18 ドメニコ・マンチーニ

ドメニコ・マンチーニ 1434以前-1494x1514 空なるは 農夫の種まき 刈り入れ時を 逸すれば。 空なるは 大将の陣立て 刃交えず 勝利もせねば。 誉むべきは 徳ある行い 知言も時を得 益多く。 なれど今 直き知言 吐けれども 無為の輩が 誉授かる。 学識深き 賢…

Enchiridion 17 ペトラルカ

フランチェスコ・ペトラルカ 1304-1374 書物は、われわれを心底から楽しませてくれ、対話し、助言し、あるいはいきいきとした深い親密さをもってわれわれと結ばれあうのです。しかも書物は、それぞれが読者の心にはいりこむばかりか、ほかの書物の名前をも忍…

Enchiridion 16 リチャード・ド・ベリー

リチャード・ド・ベリー 1287-1345 書物の中で、われわれは遠い過去の故人の生きた姿に出会い、また将来を予見する。書物の中で、戦争にかかわる諸事は整理され、また平和の法も書物から生まれる。もし神が書物という救いのすべを被造物に与えなかったなら、…