Enchiridion 26-5 モンテーニュ その5

書斎は円形をなし、私の卓と椅子のあるところだけが直線になっている。私のいるところからぐるっと円くなっているから私を囲んで五段に並んだ本が一目で見渡せる。書斎からは三方に豊かな視野が果てしなく開け、室内には直径十六歩の空間がある。冬はここにはあまり続けていない。というのは、私の邸は名前のとおり小山の上に立っていて、この室ほど風当りの強い場所はないからだ。そこまで行くのに少し骨が折れることと、離れていることが私の気に入っている。運動にもなるし、みんなから逃げてもいられるからだ。


『エセー』 第3巻第3章「三種の交わりについて」
〔『エセー (五)』 原二郎訳、岩波文庫、1967年、77頁〕


Alexander Ireland (ed.), The Book-Lover's Enchiridion, 5th ed., London, Simpkin, Marshall & Co., 1888, p.26.