Enchiridion 26-6 モンテーニュ その6

ここ※が私の居場所である。私はここにおける私の支配を絶対的なものにしようとつとめる。そしてこの一隅だけは夫婦、親子、市民の共有から引き離そうとつとめる。ここ以外では、私はどこでも口先だけの権威しかもっておらず、その実質も疑わしいものにすぎない。私の考えでは、自分の家に、本来の自分に立ち帰れるところ、自分自身を大事にできるところ、自分で隠れるところをもたない者は実にあわれである。・・・私は、けっして一人になれないことよりもむしろ常に一人でいることのほうが堪えやすいと思う。


『エセー』 第3巻第3章「三種の交わりについて」
〔『エセー (五)』 原二郎訳、岩波文庫、1967年、77-78頁〕


Alexander Ireland (ed.), The Book-Lover's Enchiridion, 5th ed., London, Simpkin, Marshall & Co., 1888, p.26.

※書斎のこと。