2011-01-01から1年間の記事一覧

高祖保と地方詩壇

東海詩人協会編 『東海詩集 第三輯 昭和三年版』 東文堂書店、1928年7月15日 第5回扶桑書房一人展にて。東海地方在住の詩人を中心とする団体の年刊詩集。 これに当時、彦根で浪人していた18歳の高祖保が散文詩2篇を寄稿している。 巻末の年表によると、高祖…

i豆本なの

ランニングのおとも、iPod nano。 そのマルチタッチディスプレイをもっと有効活用しようと、高祖保の詩集『禽のゐる五分間冩生』の画像をトリミングして入れてみた。 一行の文字数が少ない詩集などの自炊画像なら、余白を切り詰めればけっこう読める。 青空…

本の街にて

神田古本まつりで買ったもの。 詩の朗読研究会編 『詩の朗読講座 草原文庫2』 草原書房、1947年 「朗読詩集」の部に高祖保の「孟春」一篇が収録されている。本書は外村彰氏の「高祖保作品年表(一)」に記載がないので、ちょっとした発見。300円也。 尾崎一…

高祖保の検印

『雪』 文藝汎論社、1942年 架蔵本を見る限りでは、少なくとも2種類存在する。「宦南」 「玄澤」(?) 後者は判読にいまいち自信が持てないが、川上澄生宛献呈本の印である。神奈川近代文学館所蔵の木下杢太郎宛献呈本にもこれが使われている。献呈分と頒布分…

Kindle Stoic Edition

第4世代となる新Kindleのエントリーモデル。 平凡社ライブラリーとほぼ同じサイズである。 厚さは岩波文庫のボルヘス『創造者』とほぼ同じ。持つともっと薄く感じる。 安い(送料込みで$122.98)代わりに、非タッチパネルで、TTS・音声出力・スピーカー・3G…

蠹魚的台灣小旅行 台北篇

9月4日から7日まで台湾に滞在。 主に日本統治時代の建築を巡ったのだがそれはさておき、ここでは紙魚の琴線に触れたスポットを記しておこう。 日星鑄字行 台湾唯一の活字鋳造所。去年読んだ港千尋『書物の変』(せりか書房、2010年)で知り気になっていた。…

高祖保と『ひとで』

石原輝雄 『三條廣道辺り 戦前京都の詩人たち』 銀紙書房、2011年8月27日 マン・レイのレイヨグラフと俵青茅・天野隆一を繋ぐミッシング・リンクの探求記がすこぶるスリリング。ぐいぐい引き込まれたのだが、マン・レイの映画『ひとで』(L'Etoile de Mer 19…

『独楽』定稿閲覧記

高祖保の未刊詩集『独楽』の定稿が、彦根市立図書館にある。それが昨夏、詩人の遺族より同館に寄贈されたことを、2010年度日本近代文学会関西支部秋季大会における外村彰氏の発表要旨で知った。『独楽』が未刊に終わった経緯については、詩友の岩佐東一郎が…

糺の書の森にて

下鴨納涼古本まつりで買ったもの。 澁谷榮一 『詩壇人國記』 交蘭社、1933年1月11日 日本の詩人を出身県・地方ごとに分類して紹介。台湾・朝鮮・関東州の詩人も含む。5000円とたいへん悩ましい値段だったが、滋賀県の項に「高祖保」の名を見つけたので購入を…

『禽のゐる五分間写生』閲覧記

「かなぶん」こと、神奈川近代文学館へ行く。 高祖保の第2詩集『禽のゐる五分間写生』(月曜発行所、1941年)を閲覧するためである。 先月、石神井書林の目録より入手できなかったことで、古本病の悪いガスが行き場を失って心身を蝕んでおり、このままではと…

『「自炊」のすすめ』のススメ

書痴ならびに 書狼、そして 書豚各位のなかにもし、 牛に汗し棟に充つ蔵書群に囲まれながら、ひそかに紙の桎梏からの解放を天に祈っている御仁がおられたら、 本書をおススメしたい。「自炊」のすすめ 電子書籍「自炊」完全マニュアル作者: 出版社/メーカー:…

高祖保の装幀

八幡城太郎 『相模野抄』 青柳山房、1943年 高村光太郎 『をぢさんの詩』 太陽出版社、1943年 『相模野抄』は、俳人・八幡城太郎の第一句集。A6判・角背・上製カバー装の小型本である。上の写真は復刻版(青芝俳句会、1973年)。以下、そのあとがきより。 何…

文庫本の高祖保

「石神井書林古書目録」84号に、高祖保の第2詩集『禽のゐる五分間写生』を見つけたときには、たまげた。思わず箸を握り折り、ほおばっていたブロッコリーを吹き出しそうになった。夕食中のことである。 取るものも取り敢えず注文を出したのだが時すでに遅し…

湖国最古の図書館・江北図書館

滋賀へ帰省した序でに、「江北(こほく)図書館」を訪ねた。 湖北・木之本にある滋賀県最古の図書館である。 同館は、木之本の北、余呉中之郷出身の弁護士・杉野文彌(1865-1932)が、明治35年私財を投じて郷里に開設した「杉野文庫」を前身とする私立図書館…

古本に残された人生断片

地震以来、初めて神保町に出かけた。新宿古書展にて3冊購入。 森田たま『針線餘事』中央公論社、昭和18年2刷 600円 同『随筆貞女』中央公論社、昭和13年第7版 200円 小山清『二人の友』審美社、昭和40年 500円 うちに帰って繙いてみたら、 『針線餘事』の30-…

とろとろ桃のフルーニュとモンテーニュ

最近はまっているキリンの「とろとろ桃のフルーニュ」。 3年ほど前から出ている商品で、今年リニューアルされて乳酸菌が加わり、名前の方は散文味を増して「乳酸菌ととろとろ桃のフルーニュ」になった。 果汁10%未満だが、 すこぶるフルーティ。さて今日は…

図書環は、いま

読むことを愛するものとしては、主に書籍によって形成される知の環境すなわち「図書環」の、地震による被害も気がかりである。 以下、これまで個人的に注目した情報や支援の取り組み。 ※4/12更新 図書館 savelibrary @ ウィキ - 東日本大地震による図書館の…

書物を胸に

吾妻氏はモノに執着しないという有難い美徳の持ち主なのだけれど、誕生日プレゼントは人並みに欲しがる。 これは、プレゼントされる経験をプレゼントされたいという、きわめて形而上的欲求なので、モノは何だっていいのである。 ということで、今年はおもい…

高祖保と左川ちか

『左川ちか全詩集 新版』 森開社、2010年 錆びない言葉で切りとられたその詩の世界は、「いつまでもをはることはないだらう」。 新版になって、詩と散文が数篇増補されたのは嬉しい。が、旧版にあった18篇からなる追悼録が省かれてしまったのは、惜しい気が…

高祖保と高村光太郎

高村光太郎 『をぢさんの詩』 太陽出版社、1943年 高祖保が編纂から装幀までを手がけている。序文の最後に、 この詩集の出版にあたつては一方ならず詩人高祖保さんのお世話になつた事を感謝してゐる。 との謝辞がある。彼が同書に関わった経緯や編纂中の様子…

保忌

1月8日は、詩人・高祖保の祥月命日である。 午後、電車を乗り継いで墓参。彼の墓は、東京府中の多磨霊園にある。 1944年7月に召集を受けた詩人は、同年秋ビルマへ派遣された。陸軍第15師団(通称「祭」部隊)の野砲兵第21連隊に配属、1945年のこの日に戦病死…

高祖保の雪

2010年の大晦日、帰省先の彦根は朝から雪だった。 降りしきるそれは、高祖保が詠った粉雪。この冬、彦根ではそれまで雪がちらつくことはあっても、積もるほど降ったことはなかったと聞く。雪の詩人生誕100年最後の日がこのように雪で飾られたのは、天の計ら…