Enchiridion 26-4 モンテーニュ その4

書斎は塔の三階にある。一階は私の礼拝堂であり、二階は寝室とその続きの間で、私はここでときどき一人になるために横になる。その上に衣裳部屋がある。これは昔、わが家のもっとも役に立たない部屋であった。私はそこで一生の大部分の日を、また、一日の大部分の時間を過ごす。夜分はけっしてここにはいない。それに続いて、かなり粋な小部屋があり、冬には火を焚くこともでき、きわめて気持ちよく窓がしつらえてある。もしも、私が費用以上の面倒を(この面倒というのが私をあらゆる仕事から遠ざける)恐れないなら、両側に、同じ平面に、長さ百歩、幅十二歩の歩廊を簡単につけることができたろう。他の目的のために作った壁が全部ちょうどいい高さにできているからである。すべて隠居の場所には散歩場が要る。私の思想は坐らせておくと眠る。私の精神は脚に揺り動かされないと進まない。書物なしで勉強する人はみんな、こんなふうである。

『エセー』 第3巻第3章「三種の交わりについて」
〔『エセー (五)』 原二郎訳、岩波文庫、1967年、77頁〕


Alexander Ireland (ed.), The Book-Lover's Enchiridion, 5th ed., London, Simpkin, Marshall & Co., 1888, pp.25-26.