Enchiridion 24 ルター

マルティン・ルター 1483-1546

優れた書物はその一冊一冊がひとつの業であり、優れた業はそのひとつひとつが一冊の書物にも等しい。
いかなる学問の徒であれ、書物はすべからく確かなものを厳選し、何度も何度も読むべきだ。多読しても学問は修まらず、むしろ頭が混乱するだけだから。到る所で住もうとする者はどこにも根を生やせないが、それと同じことである。

『卓上語録』

Alexander Ireland (ed.), The Book-Lover's Enchiridion, 5th ed., London, Simpkin, Marshall & Co., 1888, p.18.

※以下は、今日の校訂版であるワイマール版原典からの邦訳。上記冒頭の一文は存在しない。

マルティン・ルター博士はすべての学問の学徒たちに特に優れた作家を繰り返し読むように勧めている。読書と繰り返し読むことにより良い作家と親しみ、ほとんど自分の血となり肉になるようにしなさいと言っている。なぜならあれこれ雑然と読む読書は、それから学ぶというよりは混乱させられるだけだからである。あちこち住まいを替えて住む者は、概してどこにも住まないことになる。わたしたちが日頃、人との交わりですべての人を友人として交際するのではなく、ごく少数の人を選んで交わるように、少数の、選り抜きの優れた作家に身を入れなければならない。
「正しい研究の指針」 2894b、1533年1月 (『卓上語録』 植田兼義訳、教文館、2003年、262-263頁)