Enchiridion 26-1 モンテーニュ その1

ミシェル・ド・モンテーニュ 1533-1592

書物との交際は、それ※よりもはるかに確実で、はるかにわれわれ自身のものである。これはほかのいろんな長所では初めの二つに劣るけれども、その奉仕が常に不変で手軽だという長所をもっている。そして、私がどこへ行くときにもそばに付き添ってお供をする。私の老年を、孤独を、慰めてくれる。退屈なつれづれの重荷を取り除いてくれる。私をうるさがらせる仲間からいつも私を解放してくれる。極端な圧倒するような苦痛は別だが、たいていの苦痛の鋒先を鈍らせてくれる。私は、煩わしい考えから気をまぎらすためには、書物に救いを求めさえすればよい。書物はやすやすと自分のほうに私の頭を向けさせ、煩わしい考えからそらしてくれる。しかも、私が書物を求めるのは、他のもっと現実的な、強烈な、自然の楽しみをもたないときだということがわかっても、けっして気を悪くせずに、私をいつも同じ顔で迎えてくれる。

『エセー』 第3巻 第3章 「三種の交わりについて」
〔『エセー (五)』 原二郎訳、岩波文庫、1967年、75頁〕


Alexander Ireland (ed.), The Book-Lover's Enchiridion, 5th ed., London, Simpkin, Marshall & Co., 1888, p.24.

※清廉で有能な男子との交際と、美しい貞淑な婦人との交際。