Enchiridion 26-8 モンテーニュ その8

書物は、選ぶことを知っている人にとっては多くの快適な性質をもっている。けれども、どんな楽しみも苦しみをともなわないものはない。この読書の楽しみも他の楽しみと同じように、純粋ではない。それなりの不便をもち、しかもきわめて重大な不便をもっている。つまり、精神は働くが、私が精神と同じようにおろそかにしたことのない肉体が、その間活動しないで、不活発に、元気がなくなることだ。私にとってこれほど有害な、そして、このような老境に向かいつつある年齢にあってこれほど避くべき不節制はないと思う。


『エセー』 第3巻第3章「三種の交わりについて」
〔『エセー (五)』 原二郎訳、岩波文庫、1967年、79頁〕


Alexander Ireland (ed.), The Book-Lover's Enchiridion, 5th ed., London, Simpkin, Marshall & Co., 1888, p.27.