Enchiridion 14 インドの格言

インドの格言

行い正しい人の口から出る言葉は、
滑りやすい場所での杖のようなものである。
〔『ティルックラル―古代タミルの箴言集』 第2篇第42章415、高橋孝信訳、平凡社東洋文庫660)、1999年、76頁〕


Alexander Ireland (ed.), The Book-Lover's Enchiridion, 5th ed., London, Simpkin, Marshall & Co., 1888, p.6.

東洋文庫の訳者によると、『ティルックラル』(あるいは『クラル』)は、A.D.5〜6世紀ごろ成立した南インド・タミル地方の箴言詩集で、作者はジャイナ教徒ティルヴァッルヴァル(あるいはヴァッルヴァル)である。「ティル」は「聖なる」、「クラル」は「小さなもの、短いもの」を意味する。1330の2行詩からなり、インド人の人生の3大目標、「法」・「財」・「愛」を主題としている。タミル文学史上最も高名な作品で、これまでインド国内外の200以上の言語に翻訳されており、今も広く人口に膾炙している。書物に関する箴言は、ほかにこんなものがある。

分かちあって食し、多くの生物[の命]を守ることが、
書に通じた人々が集積したすべての教えの最上のものである。(322)


緻密で優れた書に分け入り、智を習得することのないものは、
きれいに塗られ、素晴らしく飾られた土人形のようなものである。(407)


勇猛でないものが剣をもって何になろう。
優れた集いを恐れるものが[万巻の]書をもって何になろう。(726)


優れた書に通じよく語ったとしても、
貧者の言葉は色あせて聞こえる。(1046)