美術は言葉に翻訳できるか その2

埼玉県立近代美術館の「視覚障害者と楽しむ美術作品鑑賞会」に参加する。同県主催では初の試みだそうだが、後援がミュージアム・アクセス・グループMARなので、事実上はいつものMARの鑑賞ツアーである。東京都美術館の人が偵察に来ている。視覚障害者一人に晴眼者二人がつき、常設展を鑑賞する。部屋はモネ・ルノワールデルヴォーピカソなどがある西洋絵画のセクション、駒井哲郎、長谷川潔山本容子草間彌生らの「室内」をモチーフとした作品を集めたセクション、そして障害者アートのセクションに分かれている。今回一緒になった視覚障害の方は少し見え、若い頃に海外の美術館も回られたそうで、知識をかなりお持ちである。だから、前回のようにこちらがすべてを言葉で表現する必要はなかった。全体の構成やディテールをざっと説明して、あとは感想を述べ合うという、ラフな鑑賞に終始する。視覚障害者との美術鑑賞といっても、相手によってそのやり方はずいぶん違ってくる。
終了後、会議室にて参加者全員で感想を述べ合う。偵察に来ていた東京都美術館の人が、「美術は美術、福祉は福祉といった従来の縦割り行政では、なかなかいいサービスができなくていかん」というようなこと述べられる。そうした館側の問題意識が、今度の同館リニューアルにどう活かされるか。