Enchiridion 10 クインティリアヌス

クインティリアヌス A.D.42-115※

〔判断力を鍛えるにあたり、弁論を耳から聴くという方法に比べて〕読書という方法では、偏った判断に陥らずにすみ、激しい弁舌で煙に巻かれることもなく、確かめたいとき、記憶に留めたいときに同じ箇所を何度でも読み返すことができる。一度読んだものは、二読三読のうえ吟味し直さなければならない。食事のさい、われわれは食べ物を消化しやすいようドロドロに咀嚼してから呑みこむが、それと同じく読んだ事柄は原形を留めているようでは駄目で、繰り返し読んで柔らかく解してやらなければ、記憶に留め模倣に備えることはできないのである。
『弁論家の教育』10.1


最良の著者のみを長く読むべきである。彼らがわれわれの信用を欺くことはない。そして、あたかも自分で書いたかの如くに読まなければならない。拾い読みではなく、全巻を通して読め。しかるのちに再読せよ。特に弁論を読むときにはこれが教訓となる。弁論では、その真に言わんとすることが巧みに隠されているからである。
同上


しかし読者は、最良の著者の弁論が常に完璧であると短絡してはならない。
同上


Alexander Ireland (ed.), The Book-Lover's Enchiridion, 5th ed., London, Simpkin, Marshall & Co., 1888, pp.5-6.

※A.D.35頃-100頃とも。