点と線

一昨日キノコノクニヤ書店で買った本。子供が喜ぶ遊び百科。
なんでこんなの買ってしまったかというと、

孫に暗号で手紙を書いてみよう、という頁が目に留まったから。
この暗号、サイモン・シンによれば、

一七〇〇年代にはフリーメースンのメンバーたちが秘密の記録をつけるために使用し、今日でも子供たちが使っているメッシュ暗号
『暗号解読』(下) 青木薫 訳、新潮文庫、2007年、297頁

だそうで、けっこうポピュラーなものらしい。アルファベットを格子で区切り、点と線に置き換えるだけ。暗号としてはかなり単純である。そういえば、小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』にも、「フリーメーソン暗号」として登場した。

ところで、この暗号には点字の元祖という一面があるのをご存知か。

1670年に北イタリアはブレッシャで出版されたProdromo all'Arte Maestra(『大いなる術の先駆』)という本がある。著者はイエズス会士にしてアタナシウス・キルヒャーの弟子、フランチェスコ・ラーナ・テルツィ(Francesco Lana Terzi)。

同書第2章で、この暗号が盲人用文字として紹介されているのだ。

ラーナ・テルツィは、これを自分の発明(mia invent(z)ione)と書いているが、真偽のほどは寡聞にして知らない。
ピエール・アンリ点字発明者の生涯』(奥寺百合子 訳、朝日新聞社1984年)によると、ラーナ・テルツィのこの章は、1803年にフランスのコストダルノバという人物の『大部分は数世紀前の発明でありながら、新発明とうたっている発明についての試論』と題する本の中で仏訳される。1822年に、凸点の組み合わせによる盲人用文字が、フランスのもと砲兵大尉シャルル・バルビエによって考案されるが、彼はこの翻訳からヒントを得たのではないかと見られている。バルビエの盲人用文字はのちにルイ・ブライユによって改良され、今日の6点式点字として完成された。

以上、暗号と点字を結ぶ点と線の話。