電子書籍端末と視覚障害者

第28回出版UD研究会「電子書籍端末をさわって見くらべよう」(@専修大学)に行く。電子書籍端末のアクセシビリティがテーマ。

イースト株式会社・藤原隆弘氏による電子書籍端末の動向に関する講演のあと、参加者全員で実機をさわる。
iPadKindle 2、Kindle DX、SonyのReader、Barnes & Nobleのnookから、COOL-ER、IREXという会社の端末まで、有名無名機が大集合。

音声読み上げ機能があるのは、iPadKindleだけとのこと。ただしKindleは操作を読み上げない。
これがSonyのReader(Touch Edition)。タッチスクリーンでの操作は、iPadのように軽くタッチするのではなく、ちょっと指で押さないといけない。

こちらはBarnes & Nobleのnook。ページ画面の下に操作用のタッチスクリーンがある。

COOL-ERというのは初めて見た。大きなiPodといった感じ。

視覚障害者4名がモニター発表を行う。以下メモ。

1人目(弱視

  • 普段の読書にはルーペ・拡大読書機・スクリーンリーダーを使用。
  • Kindleは文字の拡大が出来るので弱視者にはいいが、全盲者は操作が出来ない。
  • ルーペを使うと、画面を傷付ける心配がある。
  • 画面と本体縁の境にルーペがぶつかってしまい、端まで読めない。
  • 発光しない電子ペーパーの画面は、顔を近づけて影を作ってしまうと読めなくなる。
  • 通常のデザインの製品を視覚障害者も使えるようになるのはいいこと。
  • 弱視者は日によって見え方が違う。電子書籍は文字の倍率を変えられるので、情報アクセスの可能性が高くなるのでは。

2人目(弱視

  • 普段の読書には15倍ルーペを使用。
  • iPadSony Reader、IREXを試用。
  • iPadの液晶画面の方が読みやすい。電子ペーパーはボケる。が、ルーペを使うとはっきり見える。
  • 自分が読める文字の大きさは50〜60ポイントなのだが、どれもそこまで大きく出来なかった。が、iPadはくっきり見えるので、なんとか読むことは可能。
  • 外に持ち出せるのはSony Reader。だが、影が出来ると読みにくくなるのが難点。自宅だと照明の明るさが読みやすさに影響する。
  • 文字を大きくすると、外では他人にも読まれるのではないかという心配がある。
  • iPadのi文庫HDでは、太字の明朝体が読みやすかったのが意外(注・一般に弱視者に読みやすい書体はゴシック体と言われている)。京極夏彦『死ねばいいのに』の書体も読みやすかった。ゴシックだとちょっとうるさい感じで読みにくい。
  • 使ってみての感想:便利だなとは思ったけど、iPadなら3分の2くらいの大きさで2万円位になって、どうしても読みたいものがないと買わないかなあ。重さもあるし。紙の方が疲れない。現状では紙の本を選ぶ。

3人目(音声ユーザー)

  • 普段の読書は点字か音声。ほとんど音声。プレクストークPTP1を使っている。
  • 今の段階では、どの電子書籍端末も使えない。
  • 若干は見えているので、iPadのような液晶なら見える。電子ペーパーは背景が白くないのでコントラストがつきにくく読みにくい。
  • 拡大に限界がなければ使える可能性もあるが、音声読み上げの機能がないと読書までには至らない。
  • 音声読み上げ機能は、簡単にオン・オフできれば健常者も利用するのではないか。
  • 触って操作するので、手が使えない人には使えない。
  • 人と同じものを使っていると、困ったとき他人にきける。
  • 視覚障害者の中には、無理して使いにくいものを使わなくてもいいという人もいれば、iPod Touchを使っている人もいる。ある程度まで使えるものなら、可能性を残しておいた方がいい。
  • 使う人が増え、市場がある程度できれば、いろんな機能を加えたアプリケーションが可能になる。
  • 今まではタダが当たり前だったが、電子書籍を使うとなるとお金がいる。お金を出して情報を買うという文化を視覚障害者の間でいかに育てるかが課題。

4人目(音声ユーザー)

  • iPad電子書籍はどこまで読めるか。VoiceOverで、音声でアプリケーションを起動することはできるが、そこまで。i文庫HDも京極夏彦も読めない。
  • 入力に関して:6点入力とかカナ入力とかができて、場所を決められればできるかもしれない。
  • これからは本を直接買うという選択肢ができる。
  • 速報性は合成音声のほうが優れている。「早い安い不味い」だが。


ちなみに、隣の席の全盲の人は、読み上げようがなにしようが、どの端末も全否定だった・・・