ドゥーチェの見た夢


GW、上海万博のでっかいパビリオンを巡るのもよかろうが、ドゥーチェの見たでっかい夢を紙上に追うのもまた乙なもの。

統領がいかにして、建築を通じてファシズムを未来に伝え、またイタリア国民を「新しい人間」へと鍛え上げようとしたのか。いかにして建築を媒介に集団記憶を操作し、民衆の魂を都合よく「鋳造」していったのか。本書を読み進めてゆくと、自身が建築家となって、石の中にファシズムの神話を刻み込んでゆくムッソリーニの姿がありありと目に浮かぶ。
「訳者あとがき 記憶を象る建築―石に刻まれたファシズムの神話」より

その神話の断片が、極東の島国からひょっこりやってきた旅行者の記憶にも、知らず知らずのうちに刻み込まれていたのだった。

  • ローマ・テルミニ駅(2009年2月10日)


そして、ローマの統一的都市像をつくる計画の棹尾を飾ったのが、テルミニ駅舎のプロジェクトであった。(338頁)

ヴェネツィア宮に、フィレンツェ駅舎およびサバウディア市の設計担当者たちを迎え入れながら、ムッソリーニはこう宣言する―「フィレンツェ駅舎は最高に美しいし、きっとイタリア国民にも好かれるであろう!」(237頁)


建築家ムッソリーニ―独裁者が夢見たファシズムの都市

建築家ムッソリーニ―独裁者が夢見たファシズムの都市