2015年の10冊
古書の10冊
※すべて詩集。
中川いつじ『天えの道』私家版、1948年
兵隊で死にそこねた私は、たゞ呆んやりと帰つてきた。敗戦国のみじめさは兵隊で苦労した御蔭で父母ほどには感じなかつたが、口に糊するための人との交際ほどいやなものはない。こんな空しさを詩によつて埋める事を覚えた。こんなとき「ラ」のおつさんを知つた、オアシスのように。そうして「ラリルレロ」えよることで一層詩を愛することができるようになつた。
(「あとがき」より)
※「ラ」のおっさんとは、長浜の詩人・武田豊のこと。「ラリルレロ」は武田が営んでいた古本屋。
丹野正『雨は両頬に』編集工房しぶや、1979年
雨だれの音階とそれがつくる水たまりが
わたしの外国であった日がある
すこしおとなになってからは
雨がさのしたにいることがすでに恋であった(「外国」より)