2010-01-01から1年間の記事一覧

忘却術が語る明治記憶術ブーム

宮武外骨によれば、記憶術の流行に対抗して彼が『忘却法』を公にすると、それを真似た類書が出たという。真偽のほどは定かでないが、確認できた明治期の忘却術に関する著作を年代順に並べてみると、なるほど外骨の書が嚆矢となっているように思われる。 宮武…

明治記憶術ブームの記憶

その1 「団団珍聞」第1030号、明治28年9月28日付 ○記臆屋 礫水道人 一軒記臆屋の店が出来るト向ふにも出来隣にも出来一軒置た隣又その隣ト出店が先から先へと出来るのみか記憶の荷を背負て競り売りするものさへ有て記憶術の 声は耳に絶えぬが是も矢張り記憶…

Reading

今日のカレントアウェアネス-Rより。http://current.ndl.go.jp/node/16065 ハーバード大学図書館、「読むとは何か?」の歴史研究に役立つオンラインコレクションを公開 Posted 2010年4月8日 ハーバード大学図書館は、「読むとは何か?」ということの知識的、…

明治記憶術ライブラリー

明治の記憶術ブームを取り上げた『記憶術のススメ―近代日本と立身出世』(岩井洋、青弓社、1997年)では、明治期に刊行された記憶術書として24点があげられていたが、ハウツー色の強いものや百科全書の記事等まで含めるともう少し数が増える。以下、刊行順に…

明治の記憶術書を読む その1

山岸利策 編 『ワデル先生秘訣 健胃記臆増進 薬剤法秘書』(第10版) 山岸利策 発行、明治28年7月 古書価3,000円也。高いんだか安いんだかよくわからない代物。文庫本ほどのサイズ。初版は明治25年6月。国立国会図書館の近代デジタルライブラリーで、28年4…

Enchiridion 31-2 フランシス・ベーコン その2

人びとの知力と知識の似姿は、書物のなかにいつまでもあり、時の損傷を免れ、たえず更新されることができるのである。これを似姿と呼ぶのも適当ではない。というのは、それはつねに子をうみ、他人の精神のなかに種子をまき、のちのちの時代に、はてしなく行…

Enchiridion 31-1 フランシス・ベーコン その1

ベーコン卿 1561-1626 学問は〔思考の〕楽しみと〔弁論の〕飾りと〔仕事を処理する〕能力のために役立つ。楽しみのためになる学問の主な効用は、私生活と隠退時にある。飾りのためになる主な効用は、会話にある。そうして能力のためになる主な効用は、仕事に…

Enchiridion 30 フィリップ・シドニー

サー・フィリップ・シドニー 1554-1586 行為の支配権はすべて知によって得られるべきであり、知は多くの知識を集めること、すなわち読書によって最もよく得られるべきものであることは、論を俟たない。『詩の弁護』1595年 Alexander Ireland (ed.), The Book…

Enchiridion 29 ジョン・リリー

ジョン・リリー 1554-1606 銭金あふれる財布より、書物あふれる書斎の方が、はるかにふさわしい。『ユーフュイーズ:機知の解剖』1578年 Alexander Ireland (ed.), The Book-Lover's Enchiridion, 5th ed., London, Simpkin, Marshall & Co., 1888, p.28.

Enchiridion 28 英国国教会祈祷書

英国国教会祈祷書 1549年版 読み、銘じ、学び、且つ深く味わい…降臨節第二主日特祷 Alexander Ireland (ed.), The Book-Lover's Enchiridion, 5th ed., London, Simpkin, Marshall & Co., 1888, p.28.

Enchiridion 27 ジョン・フローリオ

ジョン・フローリオ 1553-1625 書物の名誉について 名聞ひとたび立ちしのち 然るべきこと、そは記憶 次いで載籍、後人のため 名士の名前、その徳行 他の誉れなど藻屑のごとく 本分欠けば直ぐと消え いかな偉功も忘却の果て 在りし日のこと誰か覚えん 記憶乏…

書物の変

書物の変―グーグルベルグの時代作者: 港千尋出版社/メーカー: せりか書房発売日: 2010/02メディア: 単行本 クリック: 53回この商品を含むブログ (32件) を見るKindleやGoogleブック検索の登場など書物の世界におとずれた変化を見つめながら、人と物資と記憶…

ボルゲーゼの名品を言葉で

「ボルゲーゼ美術館展」(@東京都美術館)に行く。月曜日は本来休館日なのだが、今日は企画展ごとに設けられる「障害がある方々の特別鑑賞会」の日で、障害者とその付添いを無料で入れてくれるのである。 これまで視覚障害の方と何度か言葉で美術鑑賞をして…

社会派にウケるマッキアイオーリ展

招待券をもらったので、「イタリアの印象派 マッキアイオーリ展」(@東京都庭園美術館)に行く。19世紀後半、「マッキア(斑点)」の技法でイタリア美術にリアリズムの革命をもたらした芸術家グループの回顧展。日本では30年ぶりなんだとか。 しかし、トス…

Kindle市場調査

職場でKindleを見せてみる。 「へー」(50代男性・50代女性) 「通信料がかからないってのはいい」(50代男性・40代女性) 「意外と重い」(40代男性) 「ウチの親父にはいいかも」(40代男性) 「コレより小さいのないの?」(40代男性) 「いや、私は紙派…

犀の角のごとく

『sumus』13号「まるごと一冊晶文社特集」 「かつての」晶文社へのオマージュに満ちた一冊。目次等はこちらを。創業者・編集者・営業担当者らのエピソード、そして読書人たちによる思い出話を読むにつけ、今の同社の状況をつくづく残念に思う。 ここで晶文社…

盲目のモンテーニュ研究家ピエール・ヴィレー

モンテーニュの愛読者ならば、ピエール・ヴィレー(Pierre Villey, 1879-1933)の名を一度は目にしたことがあるのではなかろうか。手堅い実証主義的手法でモンテーニュの読書歴と各エセーの執筆年代を調べ上げ、その思想の3段階進化説(ストア主義ー懐疑主…

Enchiridion 26-8 モンテーニュ その8

書物は、選ぶことを知っている人にとっては多くの快適な性質をもっている。けれども、どんな楽しみも苦しみをともなわないものはない。この読書の楽しみも他の楽しみと同じように、純粋ではない。それなりの不便をもち、しかもきわめて重大な不便をもってい…

Enchiridion 26-7 モンテーニュ その7

もしも私に向かって、ミューズの女神をただ慰みのため、暇つぶしのために用いることはこの女神の品位を落とすことだと言う人があるならば、その人は、私と違って、快楽や遊戯や娯楽がどんなに価値のあるものかを知らない人である。私はむしろ、それ以外の目…

iPad読書には「紙と指の対話」があるらしい

「テレビとネットの近未来カンファレンス」(@池袋サンシャインシティ文化会館)に行く。電子書籍についてのディスカッションがあるというので。 前半は、ビデオジャーナリストの神田敏晶氏と「情報考学」の橋本大也氏による10のITトレンド話。次いで、メタ…

阿佐ヶ谷で語られた2010年代の出版

昨晩、「2010年代の「出版」を考える」(@阿佐ヶ谷ロフトA)に参加した。電子書籍の可能性、出版の未来を議論するトークイベント。出演は、 橋本大也(データセクション会長兼CIO、ブロガー・「情報考学」) 仲俣暁生(文芸評論家、フリー編集者、「マガジ…

Enchiridion 26-6 モンテーニュ その6

ここ※が私の居場所である。私はここにおける私の支配を絶対的なものにしようとつとめる。そしてこの一隅だけは夫婦、親子、市民の共有から引き離そうとつとめる。ここ以外では、私はどこでも口先だけの権威しかもっておらず、その実質も疑わしいものにすぎな…

Enchiridion 26-5 モンテーニュ その5

書斎は円形をなし、私の卓と椅子のあるところだけが直線になっている。私のいるところからぐるっと円くなっているから私を囲んで五段に並んだ本が一目で見渡せる。書斎からは三方に豊かな視野が果てしなく開け、室内には直径十六歩の空間がある。冬はここに…

Kindleが書物でなくなるところ

所用で空路、讃岐国に赴く。移動中の読み物としてKindleしか携えてゆかなかったのだが、これは失敗であった。 未来の書物Kindleといえども、飛行機の中ではただの「電子機器」である。よって、離陸前および離着陸時には使えない。羽田―高松間1時間10分のうち…

イタリア人にKindleを見せると

イタリア語講座の日。週1回なので、春から始めてようやく近過去・・・ で、「きのうの晩何をしたか」を話すことになった。Kindleで読書したことを伝えようとするのだが、ふぇでりか先生になかなか通じない。Kindleを鞄からとり出して見せると、先生驚愕。イ…

Enchiridion 26-4 モンテーニュ その4

書斎は塔の三階にある。一階は私の礼拝堂であり、二階は寝室とその続きの間で、私はここでときどき一人になるために横になる。その上に衣裳部屋がある。これは昔、わが家のもっとも役に立たない部屋であった。私はそこで一生の大部分の日を、また、一日の大…

Enchiridion 26-3 モンテーニュ その3

私は家にいると、割合頻繁に書斎に通う。そしてそこからやすやすと家事を監督する。入口の上にいるから、すぐ下の庭園と家畜小屋と中庭と、わが家のたいていの建物が見おろせる。私はそこでときにはある書物を、ときには別の書物を順序も目的もなくぱらぱら…

Kindle日本語化

自己責任でフォントハックを導入すると、Kindleで日本語表示ができるようになる。ただし青空文庫などの日本語フォントを埋め込んだPDFを読むぶんには不要。「Kindle Software Update Version 2.3に対応したUnicode Font Hack」を参考に、M+IPAフォントに入れ…

Kindle読書入門

読書生活にKindle導入。6インチ画面のほうである。アップルがタブレット端末を近々発表するという噂もあって、そちらも気になるのだけれど、とにかく日本語対応版の発売まで待てない。ペーパーバックとほぼ同じサイズで、 かなり薄い。 岩波文庫との比較。 …

Enchiridion 26-2 モンテーニュ その2

袂に薬をもっている病人は同情に値しない。このきわめて真実な格言を実際に経験し実践するところに私が読書から得ている成果のすべてがある。私は実際には、書物をあまり利用しない。その点では書物を知らない人々とほとんど同じである。私は書物を、守銭奴…