iPad読書には「紙と指の対話」があるらしい

「テレビとネットの近未来カンファレンス」(@池袋サンシャインシティ文化会館)に行く。電子書籍についてのディスカッションがあるというので。
前半は、ビデオジャーナリストの神田敏晶氏と「情報考学」橋本大也氏による10のITトレンド話。次いで、メタキャスト社・井上大輔氏による「iPadの衝撃とTVの未来、ソーシャルメディアについて」と題する話。iPadの本命は映像配信、真価はパーソナルTVにあるという。ふむふむと拝聴する。
電子書籍のディスカッションは後半から。パネリストは、橋本大也氏、山崎隆広氏(大学講師)、井上大輔氏、そして特別ゲストのITジャーナリスト・林信行氏。林氏は、先月のiPad発表イベントに招待された日本人3人の中の一人。日本人で初めてiPadに触った人物である。進行は神田氏。
今回主に注目したのは、橋本氏の発言。年に500冊買い、会社経営のかたわら毎日のように書評をブログにアップする本の虫は、電子書籍の可能性をどう見ているのか。
1日のトークイベントでも言っていたけれど、橋本氏は紙の本を高く評価している。本はページをめくっていくからその先に感動があるという。坊さんがお経を読みながらハイになるような感覚とも。それに対して、電子書籍による読書は情報のドーピングだという。禅の境地を、修行して実際に体験するか、クスリで疑似体験するかの違いに喩える。
これも先日言っていたが、氏は書評を書くために、読んでいる本からよく抜書きをするそうだ。出来るだけ短く書き出そうと考え、自分の手で書くから、内容が頭に入りやすいという。紙の読書ではこういうトータルな体験、深い体験ができるところを評価している。
一方、電子端末で読むのは苦痛だという。これまでいろいろな端末を試してきたが、長い本1冊読めたためしがないそうだ。だから電子書籍は短くしなくてはいけない、と。ディスカッション前のトークでは、新書よりもさらに短い「e-新書」をという発言もあった。そういえば、自分がこれまでKindleで読んできたのも短編ばかりだ。電子書籍のためには新しい本の形が必要、というのが氏の主張。解答するとすぐ採点できるEラーニングのプラットフォームとしての可能性、インタラクティブ・フィクション(「ラブプラス」みたいな・・・)なるジャンルが生まれる可能性にも期待を寄せていた。
後半の後半、林氏によるiPad体験の報告があった。電子書籍については、「紙と指の対話がある」と絶賛。そんなこと言われたら、欲しくなっちまうではないか。ちなみに、神田氏が「iPad出たら買う人?」ときいたら、結構な数の手があがっていた(半分くらい?)。その中には自分の手もあったような・・・