『禽のゐる五分間写生』閲覧記

「かなぶん」こと、神奈川近代文学館へ行く。 高祖保の第2詩集『禽のゐる五分間写生』(月曜発行所、1941年)を閲覧するためである。 先月、石神井書林の目録より入手できなかったことで、古本病の悪いガスが行き場を失って心身を蝕んでおり、このままではと…

『「自炊」のすすめ』のススメ

書痴ならびに 書狼、そして 書豚各位のなかにもし、 牛に汗し棟に充つ蔵書群に囲まれながら、ひそかに紙の桎梏からの解放を天に祈っている御仁がおられたら、 本書をおススメしたい。「自炊」のすすめ 電子書籍「自炊」完全マニュアル作者: 出版社/メーカー:…

高祖保の装幀

八幡城太郎 『相模野抄』 青柳山房、1943年 高村光太郎 『をぢさんの詩』 太陽出版社、1943年 『相模野抄』は、俳人・八幡城太郎の第一句集。A6判・角背・上製カバー装の小型本である。上の写真は復刻版(青芝俳句会、1973年)。以下、そのあとがきより。 何…

文庫本の高祖保

「石神井書林古書目録」84号に、高祖保の第2詩集『禽のゐる五分間写生』を見つけたときには、たまげた。思わず箸を握り折り、ほおばっていたブロッコリーを吹き出しそうになった。夕食中のことである。 取るものも取り敢えず注文を出したのだが時すでに遅し…

湖国最古の図書館・江北図書館

滋賀へ帰省した序でに、「江北(こほく)図書館」を訪ねた。 湖北・木之本にある滋賀県最古の図書館である。 同館は、木之本の北、余呉中之郷出身の弁護士・杉野文彌(1865-1932)が、明治35年私財を投じて郷里に開設した「杉野文庫」を前身とする私立図書館…

古本に残された人生断片

地震以来、初めて神保町に出かけた。新宿古書展にて3冊購入。 森田たま『針線餘事』中央公論社、昭和18年2刷 600円 同『随筆貞女』中央公論社、昭和13年第7版 200円 小山清『二人の友』審美社、昭和40年 500円 うちに帰って繙いてみたら、 『針線餘事』の30-…

とろとろ桃のフルーニュとモンテーニュ

最近はまっているキリンの「とろとろ桃のフルーニュ」。 3年ほど前から出ている商品で、今年リニューアルされて乳酸菌が加わり、名前の方は散文味を増して「乳酸菌ととろとろ桃のフルーニュ」になった。 果汁10%未満だが、 すこぶるフルーティ。さて今日は…

図書環は、いま

読むことを愛するものとしては、主に書籍によって形成される知の環境すなわち「図書環」の、地震による被害も気がかりである。 以下、これまで個人的に注目した情報や支援の取り組み。 ※4/12更新 図書館 savelibrary @ ウィキ - 東日本大地震による図書館の…

書物を胸に

吾妻氏はモノに執着しないという有難い美徳の持ち主なのだけれど、誕生日プレゼントは人並みに欲しがる。 これは、プレゼントされる経験をプレゼントされたいという、きわめて形而上的欲求なので、モノは何だっていいのである。 ということで、今年はおもい…

高祖保と左川ちか

『左川ちか全詩集 新版』 森開社、2010年 錆びない言葉で切りとられたその詩の世界は、「いつまでもをはることはないだらう」。 新版になって、詩と散文が数篇増補されたのは嬉しい。が、旧版にあった18篇からなる追悼録が省かれてしまったのは、惜しい気が…

高祖保と高村光太郎

高村光太郎 『をぢさんの詩』 太陽出版社、1943年 高祖保が編纂から装幀までを手がけている。序文の最後に、 この詩集の出版にあたつては一方ならず詩人高祖保さんのお世話になつた事を感謝してゐる。 との謝辞がある。彼が同書に関わった経緯や編纂中の様子…

保忌

1月8日は、詩人・高祖保の祥月命日である。 午後、電車を乗り継いで墓参。彼の墓は、東京府中の多磨霊園にある。 1944年7月に召集を受けた詩人は、同年秋ビルマへ派遣された。陸軍第15師団(通称「祭」部隊)の野砲兵第21連隊に配属、1945年のこの日に戦病死…

高祖保の雪

2010年の大晦日、帰省先の彦根は朝から雪だった。 降りしきるそれは、高祖保が詠った粉雪。この冬、彦根ではそれまで雪がちらつくことはあっても、積もるほど降ったことはなかったと聞く。雪の詩人生誕100年最後の日がこのように雪で飾られたのは、天の計ら…

年の徂徠

年の徂徠 いま燈火(あかし)は、弱弱しげに、細まる。 乞丐(かたゐ)のやうな十二月が 見窄らしく扉(と)に衝(あた)つて、わが家の角を折れていつた。‥‥‥‥二足(あし)、三足(あし)。 そつと、闇のなかにと降(お)りてゆく、年の背(そびら)。 その…

雪の詩人・高祖保

「夜のからんからんに乾いた空気の、その底で」、高祖保の詩集『雪』を読む。 師走の夜ふけ、独坐する北向きの書斎は、寒い。 『雪』は、そんな場所で読むにふさわしい詩集である。 雪もよひ 寒い。 わかい歯科医のもとへ 一句 「歯石(しせき)はづす 夜の…

不在の言葉

古本まつりで賑わう神保町の裏路地で、ひっそりと「福田尚代展」が始まった。 喫茶「さぼうる」隣の「gallery福果」にて、1日から13日まで。詳細は、こちら 福田氏はこれまで、「言葉」に対する独自の感覚を、書物・手紙・名刺などを用いたオブジェや回文で…

瀧井孝作と櫻井書店

瀧井孝作 『琴の物語』(少年のための純文学選) 櫻井書店、昭和22年初版、昭和25年重版 先月はじめに、田村書店の店頭で見つけた。初版600円、重版400円だった。初版の装幀と扉絵は里見勝蔵、挿絵は鈴木信太郎。 重版の装幀は寺田政明にかわっている。扉絵…

Kindle 3のVoice Guide

Kindle 3には、先代KindleやKindle DXにもあった合成音声による本文読み上げ機能・Text-to-Speechに加えて、操作メニューを読み上げる機能・Voice Guideが搭載されている。(現在いずれも音声は英語のみ) Voice Guideの起動は、ホーム画面>Menu>Settings…

豊かさの影で

今週はのっけからこんなイベントに行ってきた。 9/5 討論会「障害のある子どものためのデジタル教科書の在り方を考える」(@東大先端研) 9/6 水俣展(@明大アカデミーコモン) 9/7 ロジェ・シャルチエ講演会「本と読書、その歴史と未来」(@国立国会図書…

富山途中下車

朝市を歩いたあと早々に高山を発ち、北陸回りで江州彦根の実家へ向かう。 富山で途中下車。富山県立近代美術館へ行く。 瀧口修造コレクションを中心に常設展をみる。ミュージアムショップにて、瀧口修造のデカルコマニー連作「私の心臓は時を刻む」の図録を…

飛騨高山

江戸から飛騨高山経由で江州彦根に帰省する。 名古屋で高山本線に乗り換えて列島を縦断、富山から北陸本線で米原へ、という大きな逆S字を描くルートをとる。 一日目は飛騨高山に滞在。 古い町並は後回しにして、まず高山市図書館を見に行く。 レトロな図書館…

ファルネーゼ・コレクションとナポリ・バロック

「カポディモンテ美術館展」(@国立西洋美術館)に行く。 カポディモンテ美術館は、ナポリの国立美術館。元は、ナポリ王カルロ7世(のちスペイン王カルロス3世)が1738年に建造を始めたブルボン家の宮殿。現在は現代美術までカバーする美術館だが、コレク…

電子書籍元年の東京国際ブックフェア

「東京国際ブックフェア」(@東京ビッグサイト、11日まで)に行く。 電子書籍元年とあって、同時開催の「デジタルパブリッシングフェア2010」(10日まで)の人口密度高し。 ここの花形は出版社ではなく、電子書籍の制作と配信を担う企業。それぞれのソリュ…

線の探検

瀧口修造の光跡 II 「デッサンする手」(@森岡書店)に行く。 瀧口修造研究家・土渕信彦氏所蔵のドローイング・水彩・デカルコマニーなど、約30点を展示。今日から7月10日まで。 白く静謐な空間で、ゆっくり「文字でもなく、絵でもない線の探検に耽る」(「…

iPadでマルチメディアDAISY図書が読めること

iPhoneアプリ・VOD(Voice of DAISY)。iPad購入日に導入したものの一つである。 これは、DAISY 2.02規格のマルチメディアDAISY図書(音声+フルテキスト)と音声DAISY図書(音声+NCC)をiPhone/iPod touchで再生するためのアプリ。DAISY(Digital Accessib…

Kindle 2.5.3と青空文庫

先日、日本語フォントハックを外してKindleのファームウェアを手動で2.5.2にアップデートしたのだが、しばらくするといつの間にか2.5.3になっていたのだった。2.5.2から、フォルダに整理出来るようになったり(画面上4つがフォルダ、括弧内がファイル数) …

酔っぱらいのKindleケース

北海道土産をもらった。日本最北の酒蔵・国稀酒造の甚平袋。 こうやって使うのだろうが、 残念ながら、酒瓶さげて出かける機会はあまりない。 他の用途を探したところ、 Kindleケースにぴったりだった。 酒と文字に酔い痴れたいKindleユーザーにおすすめ。 …

電子書籍端末と視覚障害者

第28回出版UD研究会「電子書籍端末をさわって見くらべよう」(@専修大学)に行く。電子書籍端末のアクセシビリティがテーマ。イースト株式会社・藤原隆弘氏による電子書籍端末の動向に関する講演のあと、参加者全員で実機をさわる。 iPad、Kindle 2、Kindle…

この先にあるブック・ビジネスのかたち

第1回ARGトーク「この先にあるブック・ビジネスのかたち–持続可能な「知のエコシステム」の構築のために」(@丸善丸の内本店 3F 日経セミナールーム)に行く。上の階は松丸本舗。がんばってiPadでメモを取ってみた。(隣の人も!) が、今さらそんなもの読…

iPadのVoiceOverで本を「聴く」

iPadには、Mac OS X機やiPhone 3GS、iPod TouchなどのApple製品と同様、画面読み上げ機能「VoiceOver」が標準搭載されている。 言語は「音声環境」にある9言語に対応。読み上げ速度は調整できるが、声質(男性・女性など)は選べない。英語・日本語・フランス…