詩人の形見分け

帰省のついでという名目で、下鴨納涼古本まつりへ。

品川でのぞみに乗ったのだが、朝も早よから大層な混みよう。指定席を取っておかなかったばかりに、京都まで立ちんぼする羽目に。
ふらふらと糺の森にたどり着いたのは9時45分ごろのこと。案内図を見ると、一番手前が赤尾照文堂である。先月の京王新宿に詩書をたくさん出していたのが記憶に新しい。まずはここからと決め、3冊500円の台をのぞきに行く。
雨滴に濡れたビニールシートの下を透かし見る。と、そこには京王新宿の規模をはるかに超える広大な詩書の猟場が。すでに古本猛者たちがぐるりを取り囲み、虎視耽々まつり開始の瞬間を待ち構えている。こんなことならもっと早く来るべきだった。
以下、猛者たちに混じってようよう得られたもの。

  • 荒木二三 『オフェリア頌』 コルボオ詩話会、1956年
  • 『荒木文雄詩集』 ラビーン社、1978年

  • 天野隆一 『手摺のある石段』 文童社、1987年
  • 同 『八坂通』 文童社、1993年

  • 由利俊 『ひかりによる吹奏を』 文童社、1972年
  • 同 『情景』 文童社、1974年
  • 同 『夜の魚』 文童社、1982年
  • 同 『偏執へ』 文童社、1986年

  • 織田喜久子 『遺跡』 文童社、1975年

  • こうの・ひとあき 『猫背の嗤い』 文童社、1962年
  • 河野仁昭 『村』 文童社、1980年
  • 同 『詩への小道』 洛西書院、2008年

  • 有馬敲・上村多恵子・正木美津子 編 『年表 戦後詩史・京都』 現代京都詩話会、1979年

  • 『井上多喜三郎全集』 同刊行会、2004年
  • 『近江詩人会50年』 近江詩人会、2000年

〆て2500円也。文童社の詩集など、東京ではあまりお目にかかれない本がまとめて安く買えたのが、嬉しい。
昼はスムースランチに初参加。参加者の多くが均一台の猛者だった。披露された戦利品はさすが、みないいもの珍しいものばかり。羨ましい。後ほど善行堂氏から、氏が掘り出された詩誌『真珠 第57号 武田豊追悼特集』(真珠グループ、1988年)をお店で譲っていただいた。長浜の詩人・武田豊を知る上で貴重な資料。

聞くところによると、あの均一台の詩書たちは、今年亡くなられた河野仁昭氏の旧蔵書だったらしい。自分が買ったものを見ても、河野氏宛ての献呈署名や送付状、献呈箋の入っているものが多い。

なかには、いくつかの詩にポスト・イットが貼ってある本や、解説文に鉛筆の線引きがある本もあった。そういえば、先月京王新宿で買った『山前実治全詩集』には、メモ書きが挟まっていたっけ。これらは、河野氏がエッセイなどの執筆に使われた本だったのだろう。

というわけで、今回の古本まつりの一角は、河野氏の公開形見分け会のごとき様相を呈していたのだった。
氏は草葉の陰で、この光景をどう見ておられるだろう。午後、雷鳴とともに突如降り出した雨はもしかして・・・などと今にして思う。

大切にしますよ。