DOMANI・明日展

国立新美術館で、「DOMANI・明日展2009」を見る。文化庁の在外研修制度で海外派遣された芸術家12名のグループ展。

高野浩子氏と、浅見貴子氏の作品に惹かれた。

高野氏の作品は、思い出・記憶がモチーフ。「思い出についてIV」では、天井近くまで積み上げられた木の棚に、木の書物が乱雑に詰め込まれている。作者の頭の中を表象しているのだろうか、記憶のうねりのようなものを感じる。気が付きにくいけれど、かすかにあいた抽斗の一つに中年男性の写真が入っていて、名前と生没年月日を記した紙片が添えられている。大切な人だったのだろうか。「想う人」シリーズでは、瞳を閉じたテラコッタの女神たちが、ときには書物を抱き、ときには書物にもたれて、もの想いにふけっている。「想う人―記憶の中へ」「想う人―夢の中の図書館」というタイトルもステキだ。

浅見氏の作品は、すべて麻紙に墨で樹木を描いたもの。繊細な枝の線と、大小の滲んだ点で表された葉や実との対照に、樹木のざわめきを感じる。躍動する水墨画とでもいえようか。実は、作者は裏側に描いており、鑑賞者はそれが染み出した面を見ている。不思議な質感・奥行き感はそのためだろう。基本的に白黒の世界なのだが、「梅に楓図」などは、「まぶしい」印象を受ける。樹木の絵と教えられなければ、光の粒子がこちらに向けて飛んできている絵のようにも見えるだろう。そういえば、3年ほど前に氏の個展を見に行ったことがあるのだが、そのタイトルは「光を見ている」だった。墨で光が描ける稀有な画家である。