厦門採訪 鼓浪嶼篇

鼓浪嶼(コロンス島)を歩く。
厦門島よりフェリーで数分の距離にある、かつて共同租界だった小島である。
いまも租界時代に建てられた洋館や、華僑の古い別荘が数多く残る。

旧日本領事館、1898年築。「重点歴史風貌建築」のプレートが掲げられているが、

住居として使われているようだ。

作家・林語堂旧居、1850年代築。ここも、

人が住んでいる・・・

カフェや旅館になっているところ、入場料を取ってがっちり管理しているところもあるが、由緒ありげな建物でもたいてい誰か住んでいて、洗濯物がぶら下がっている。

島の最高峰・日光岩からの眺望。

高層ビルが林立する対岸の厦門島とは対照的である。佐藤春夫が滞在した頃とそれほど変わっていないのではなかろうか。
『南方紀行』に登場する建物を見つけた。

或る日「観海別墅」といふのへ這入つて見たことがあつた。これは其名の通りに海角に建てられたもので、その馬蹄形の庭園のぐるりには砲塁のやうに銃眼のある胸壁を取りめぐらして、それの外側に打よせる浪を見る為めにその胸壁の内側には幅一間ほどの三和土の歩道―それの延長が三町ほどのものがあつた。

「銃眼のある胸壁」

同書によると、当時これは製糖会社で財を成した華僑の別荘だった。1918年築で、現在はこれも「重点歴史風貌建築」。立ち入り禁止で門が閉ざされていた。

この島は観光用の電動カート以外の車は通行禁止なため、ぶらぶらのんびり散策できる。

僕にはここの道はどうしてもわからない。何故かといふのに、ここの道は一筋として真直なのは無いので、東へ行つてゐるつもりでゐると何時の間にか曲がりくねつて西の方へ歩いてゐたり、つい目の前に見えてゐる林木土の家へ行かうと思つて歩いて行くうちに道が妙にまがつてだんだんその家が遠ざかつて行つたりする。迷宮のやうな道である。

そんな道をとにかく、

歩いて、

歩いて、

歩きまくって、一日探検する。同じく車が通らないヴェネチアの街を歩く感覚に、ちょっと似ている。
帰路、フェリー乗り場近くの繁華街で古本カフェを見つけた。

ここでレモンティーなんぞ啜っていると、中国にいることを忘れそうになる。

複雑な歴史的背景を持っている故か、不思議な雰囲気の島であった。