保忌

彦根は雪のよく降る処ときく。一月八日、惨たるビルマの病床に、せめて一片の雪をその最後の唇に散らして上げたかつた。私もまた雪が大好きの性、ふるとも舞ひ上がるともはて知らぬ空に、みぢんに散りばふ雪の中に、いえ、その雪こそあなたと……。


津軽照子 「雲なれば」 より
『青芝』 15号 (天童高祖保追悼号、1954年11月)所収