古書をまとえば

In the Libraryという香水がある。

甘く年古りた、

「かうばしい本のにほひ」(尾形亀之助「九月の詩」)。

由緒書によると、調香師のChristopher Brosius氏はそうとう、

Whenever I read, the start of the journey is always opening the book and breathing deeply. There are few things more wonderful than the smell of a much-loved book.

フェチな書痴である。香りのメインは、氏がロンドンで手に入れた、偏愛する小説の「1927年初版・100部限定・署名入・極美」本のそれだという。
何の小説か気になるところだが、同好の士ならば、ひと嗅ぎでかつて親しんだあの本この本を思い浮かべて陶然とするだろう。
これをつけるのは、お気に入りの洋古書を身にまとうようなものである。一日古書に囲まれた気分で過ごすことができるだろう。ただし、あまりつけすぎると自身が歩くライブラリーになるので要注意。

というのはこの香り、古書趣味を解さない向きには全く違った印象を与える可能性があるからだ。ちなみにわが家では身につけることができない。

仕方がないので別のものにちょっぴりつけて、

ひそかに楽しんでいる。