虚栄の市にて

「銀座 古書の市」で買ったもの。

  • 『年刊日本プロレタリア創作集 1932年版』 日本プロレタリア作家同盟出版部、1932年


250円也。見返しに発売時のものと思しき三省堂のラベルが残っている。

1931年満州事変勃発、1933年小林多喜二虐殺、というおっかない時代だけれど、この手の書物はまだ一般書店で売られていたようだ。
だが開いてみると伏字だらけ。こんなところから当時の世相がうかがえる。

1934年2月、日本プロレタリア作家同盟(ナルプ)は解散を表明。思想・言論統制は年々厳しさを増し、世の中は軍国主義に染められてゆく。


そして戦争の激化にともない、世の中にはこの手の愛国詩集が氾濫するようになる。500円也。
ところでこの本の見返しには、大森の古本屋・山王書房のラベルが残されている。

昔日の客』や野呂邦暢の愛読者にとっては、なんとも愛おしい紙片である。

  • 『国訳 扶桑隠逸伝』 平楽寺書店、1930年


函欠1800円也。元政上人(1623-68)による日本の隠者・奇僧75人の伝。原文(漢文)とその書き下しが二段組みで対になっている。一人につき一枚の挿絵がつく。
いずれ劣らぬ畸人揃いだが、二代にわたり万巻の書に囲まれて隠棲した紀俊長・紀行文父子には憧れる。